骨粗鬆症と歯周病
■骨粗鬆症
世界保健機関では、骨粗鬆症を骨密度(Bone Mineral Density : B M D )で定義しており、性や種族を一致させた場合、若年者の平均ピークB M D より、標準偏差で2.5低い状態としている。
骨粗鬆症と骨折に関連する因子として考えられるのは、加齢、白人、女性、生活様式(喫煙、活力、栄養)、全身状態、薬剤の摂取、落ち込みやすい性格などがあげられる。
また、骨粗鬆症に関連した骨吸収は、骨吸収と骨添加のバランスが骨吸収に傾いているために起きる。カルシウムバランス、ビタミンD 代謝、エストロゲン、加齢は原因因子の相互作用に関連しあう因子である。
■歯周病
人口の75%が何らかのタイプの歯周病に罹患している。歯周病は高齢者の死亡率の増大のリスクに関与していることが明らかにされている。歯周病の最大の原因は、細菌感染であることも確立されている。細菌感染の結果、軟組織の歯質へのアタッチメントロスや歯槽骨の吸収が起こるが、それに続いて歯の喪失と総義歯へと進み、さらに残存骨の吸収や持続的な口腔内の骨の吸収が見られることになる。歯周感染により生ずる細菌の侵襲は、免疫反応を増強させることが知られている。この免疫反応が口腔内の骨吸収を引き起こす1つのメカニズムであると考えられている。
また、歯周病は歴史的に感染性の疾患と考えられていたにも関わらず、一部の人たちには、全身性の骨量減少の初期病変であることを示唆していた。
■骨粗鬆症の治療薬と歯周病との関わり合い
骨粗鬆症の治療薬としては、カルシウム、ビタミンD の摂取以外に、ホルモン補充療法、ビスホスフォネート、SERMs (選択的エストロゲン受容体調節薬)、カルシトニンがある。このうち、ビスホスフォネートだけが、はじめて歯周炎のマネージメントに役割を果たすことが評価された。
■骨粗鬆症と慢性歯周炎を関連づけるメカニズム
正常な骨の恒常性が保てなくなると、病態生理学構造上、最初に骨芽細胞の活性が低下するよりも破骨細胞の活性上昇が起こる。炎症性サイトカインであるインターロイキンー6(IL-6)は、骨吸収の中心として働くと思われる。正常な骨の恒常性では、IL-6 は骨芽細胞により産生され、骨の恒常性の一環としての破骨細胞性骨吸収を促す。骨密度(BMD)に影響を与える多くの因子は、IL-6 の介入を受けるであろう。たとえば、エストロゲンはIL-6 産生を抑制することにより、骨芽細胞活性を低下させ、BMDを保つ。
臨床的には、エストロゲン補充療法は、喫煙者に対しまったく効果がない。ニコチンがIL-6 産生を促進し、破骨細胞を活性化し、エストロゲンの効果を阻害するからである。
キーワード:ホルモン、サイトカイン、ビスホスフォネート
北山歯科クリニック 院長 北山高之