口腔がんの予防と早期発見に向けて
■口腔領域がんの概略
1)口腔領域がんの発生部位
口腔領域では、歯を除いたほとんどの部位にがんが発生し、もっとも頻度が高いのは口腔粘膜である。その他に大・小唾液腺、顎骨、腺組織、リンパ組織などにも発生し、狭い領域の割に多彩な様相を呈している。もっとも多い粘膜がんを発生部位別にみると、日本では舌、下顎歯肉、口底などに多い。
2)口腔領域がんの発生数
日本ではまだ全国規模のがん登録制度が確立せれていないため、正確な数は不明であるが、推定では、口腔領域がんの発生は年間3千人前後である。
3)口腔領域がんの病理組織型
扁平上皮癌が85%前後を占める。唾液腺癌の組織型は多彩である。一方、非上皮性腫瘍の発生数は少ないが、骨肉腫、繊維腫、悪性リンパ腫などが発生する。また、粘膜由来の悪性黒色腫も発生する。
4)口腔領域がんの治療方法
外科療法がもっとも多用される。1970年代に開発された再建手術により手術適応が拡大し、形態の回復や機能の保持とともに治癒率の向上をもたらした。
放射線療法では、早期の扁平上皮癌などを対象に、放射線源を直接腫瘍部位に埋め込む小線源治療などが行われる。
一方、抗がん剤治療は、悪性リンパ腫以外効果は薄く、現段階では根治治療の第1選択にはなり得ない。治癒率の向上、障害や副作用の軽減などを目的に、併用療法が行われる。
■がんの予防
がんの疫学の専門家は、禁煙で30%、食生活の改善で30%、併せて60%のがんは防ぎ得ると考えている。喫煙により口腔がん死の確立が3倍になることや、野菜や果実の摂取ががん予防に有効であるというWHOの勧告は積極的に受け入れるべきである。
硬口蓋悪性黒色腫 前がん病変、白板症 表在型の扁平上皮がん(軟口蓋)
北山歯科クリニック 院長 北山高之